2012年4月18日水曜日

Barcarolle

あたたかな光がともる
音楽にみたされた立方体
遠くゆらめく記憶の彼方で
またたく星のよう

いくつもの歌が
生まれては消えていった
昼下がりの舗道に
こぼれ落ちている音のしずく

手にふれる世界のすべてを
ぼくは愛している

たくさんの点をつないだら
言葉になった
ようやくたどり着いたのは
ふたつの線が重なりあう座標

そこから見える景色は
なつかしくもあり真あたらしくもある
見覚えのない場所なのに
ずいぶん昔から知っていたような

そうしてきみはまた
ぼくの一部になる

春がやってくるのと同じ速さで
冬が遠のいていく
ぼくらには何ものこさないのに
さよならだけは告げる

ふたりは顔を見合わせて
なるだけさりげなく手をふった
ぼくのマフラーはまだすこし
冬のにおいがした